高浜発電所4号機の定期検査状況
(蒸気発生器伝熱管損傷の原因と対策) 2 0 2 5 年 9 月 1 日
関西電力株式会社
高浜発電所4号機(加圧水型軽水炉 定格電気出力87万キロワット、定格熱出力266万キロワット)は、2025年6月18日から実施している第26回定期検査において、3台(A、B、C)ある蒸気発生器(以下、SG)の伝熱管全数※1について渦流探傷検査(以下、ECT)※2を実施しました。
その結果、C-SGの伝熱管2本について、いずれも管支持板部付近に外面(2次側)からの減肉とみられる有意な信号指示※3が認められました。また、A-SGの伝熱管1本およびC-SGの伝熱管1本の高温側管板上部に内面(1次側)からの割れとみられる有意な信号指示が認められました。
※1:過去に有意な信号指示が認められ、施栓した管等を除き、A-SGで3,236本、B-SGで3,245本、C-SGで3,246本、合計9,727本。
※2:高周波電流を流したコイルを伝熱管に接近させることで対象物に渦電流を発生 させ、対象物のきず等により生じた渦電流の変化を電気信号として取り出し、きず等を検出する検査であり、伝熱管の内外面の両方を検査している。
※3:割れを示す信号や20%以上の減肉を示す信号の指示。
(2025年7月23日お知らせ済)
当社は、これまでの調査結果や原因と対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に原子炉施設故障等報告書を提出しました。
1.外面減肉とみられる信号指示が認められた伝熱管の調査
(これまでの経緯)
伝熱管の外面減肉については、2018年以降の高浜発電所3号機 および高浜発電所4号機の定期検査(3号機:第23回~第27回、4号機:第22回~第25回)においてこれまで計32本確認しています。 このうち、高浜発電所4号機の第23回定期検査(2020年10月~2021年4月)では、減肉箇所に付着物を確認しています。詳細調査の結果、この付着物は、プラント運転に伴いSG伝熱管表面に生成されたスケール※4が一部剥離したものであり、密度の高い酸化鉄の層(稠密層)を有することを確認しています。
また、伝熱管減肉部と接触していたと想定される部位に、接触痕および光沢を確認し、伝熱管の主成分であるニッケルおよびクロムの成分を検出したことなどから、この付着物が伝熱管をきずつけたものと推定しています。
このため、同定期検査以降、2回にわたりスケールの脆弱化を目的とした薬品洗浄を行い(高浜発電所3号機:第24、25回定期検査、高浜発電所4号機:第23、24回定期検査)、その後の定期検査でスケールの回収、分析を実施し、稠密層の厚いスケールの割合が減少していることを確認しています。
また、管板、各管支持板上面のスケール除去等を目的として、2回目の薬品洗浄を行った定期検査以降(高浜発電所3号機は第25回定期検査以降、高浜発電所4号機は第24回定期検査以降)、毎回、小型高圧洗浄装置によるSG器内の洗浄を行っています。
一方で、プラント起動や運転に伴い伝熱管表面から剥離するスケールには、依然として稠密なスケールもあるため、高浜発電所3号機第26回定期検査および高浜発電所4号機第25回定期検査では外面減肉が発生しています。
なお、高浜発電所3号機の第27回定期検査では外面減肉は発生していません。
(今回の定期検査における調査)
今回の高浜発電所4号機第26回定期検査では、前回に引き続き、外面減肉と見られる有意な信号指示が認められたため、当該箇所の外観観察やスケールの断面観察等の調査を行いました。
※4:2次冷却水に含まれる鉄分が、SG器内に流れ集まって伝熱管に付着したもの。
(1)信号指示が認められた箇所の外観観察
C-SGの管支持板下面付近に信号指示が認められた伝熱管2本について、小型カメラを用いた外観観察を実施した結果、いずれも周方向に摩耗減肉とみられるきずを確認しました。
その大きさは、幅約1mm 以下、周方向に約2mm、約7mm でした。 なお、きずの周辺にはスケールは認められなかったものの、当該伝熱管周辺の管支持板下面に接触痕を確認しました。
(2)SG器内のスケールの残存状況調査および伝熱管表面の観察
小型カメラを用いて、C-SGの管板、第1から第6管支持板上面の調査を実施した結果、今回の運転サイクル中に伝熱管から剥離したと考えられるスケールおよびスラッジ※5が管板および各管支持板に残存していることを確認しました。
また、管支持板付近の伝熱管表面を観察した結果、局所的にスケールが剥離した痕跡を確認しました。
※5:スケールが砕けて小さくなったもの。
(3)スケールの断面観察
稠密なスケールが比較的残存していると考えられる各SG下部(管板上面、第1管支持板および第2管支持板上面)から、スケールを 60個取り出し、断面観察を行いました。
その結果、この中には稠密層の厚いスケールは確認されませんでした。また、薬品洗浄した後の第25回定期検査時に回収したスケールと比較しても稠密層が成長していないことを確認しました。
(4)スケールの摩耗試験
断面観察を実施した60個のスケールのうち、摩耗試験が可能な大きさ(約10mm×約5mm 以上)であった10個を対象に試験を実施した結果、伝熱管を摩耗させる可能性のあるスケールは確認されませんでした。
(5)2次系の水質管理の調査
今回の運転サイクルの2次系給水の水質管理の履歴を調査したところ、pH管理値などの水質に異常はなく、配管内面等からの鉄分の溶出は抑えられており、SG器内への鉄分の持込量を十分抑制できていることを確認しました。
2.過去の調査結果の確認 (スケールの発生・減肉メカニズム)
スケールの生成と関係するSG器内への鉄イオンや鉄微粒子の持ち込み量について調査を実施した結果、高浜発電所3号機および高浜発電所4号機については、SGの運転時間が他プラントよりも長いことなどから、持ち込み量が多いことを確認しています。
また、福島第一原子力発電所事故後の長期停止中は、腐食防止のため、SG器内をヒドラジン水による満水保管にしており、その状態を模擬した試験を実施した結果、時間の経過とともにスケールを構成する鉄粒子が結合し粒径が大きくなることを確認しています。粒径が大きくなると伝熱管との接触面積が減少するため、プラントの運転等に伴い伝熱管からスケールが剥離しやすい状態になっていたものと推定しています。
減肉メカニズムについては、メーカ工場で再現試験等を実施した結果、SG器内の2次冷却水の上昇流により、スケールの形状によっては管支持板下面に押し付けられその場に留まり、伝熱管がプラント運転に伴う振動でスケールと繰り返し接触し、摩耗減肉が発生することを確認しています。
3.内面からの信号指示が認められた伝熱管の調査
当該伝熱管については、信号指示の場所が高温側管板部のローラ拡管※6上端部付近であり、伝熱管の軸方向に沿った内面きずを示していることから、従来と同様に応力腐食割れと考えられるため、過去の調査結果を確認するとともに、運転履歴を調査しました。
※6:伝熱管内部に機械式ローラを通すことで伝熱管を押し広げて、伝熱管と管板を接合させた箇所。
(1)過去の調査結果の確認
高浜発電所4号機では、第11回定期検査(運転時間約11万時間)で伝熱管1本の高温側管板拡管部で損傷を確認して以降、前回定期検査までに伝熱管24本の高温側管板拡管部で損傷を確認しています。
その原因は、SG製造時に伝熱管内面からローラ拡管を実施した際に伝熱管内面に局所的に生じた引張り残留応力と運転時の内圧および温度環境が相まって生じた応力腐食割れであると推定しています。
なお、高浜発電所4号機では、第13回定期検査において、伝熱管の高温側管板拡管部内面にショットピーニング※7を施工し、伝熱管内表面の引張り残留応力を改善しました。この施工では、伝熱管内表面近傍(深さ約0.2mm まで)の引張り残留応力は改善されますが、これより深い部分では効果が小さくなることを確認しています。
このため、ショットピーニング施工時に、ECTの検出限界未満(深さ約0.5mm 未満)の微小なきずが既に発生していた場合、時間の経過とともにきずが進展する可能性があると推定しており、高経年化技術評価でも当該箇所での応力腐食割れの検出が否定できないとしています。
※7:伝熱管内面に小さな金属球を高速で叩き付けることにより、伝熱管内面の引張り残留応力を圧縮応力に改善する工事。
(2)運転履歴の調査結果
高浜発電所4号機は、1985年に運転を開始して以降、これまでに、約24万時間の運転を行ってきました。
1次冷却材の主要パラメータである温度、圧力、水質を調査した結果、前回定期検査(第25回)終了以降の運転実績の中で、過大な応力を発生させる温度、圧力の変化はなく、水質も基準値の範囲内で安定していたことを確認しました。
4.推定原因
伝熱管の外面減肉が認められた原因は、これまでと同様に過去に2次系給水系統からSG器内に持ち込まれた鉄分により伝熱管表面に生成された稠密なスケールが、プラント起動や運転に伴い一部が剥離し、管支持板下面に留まり、伝熱管に繰り返し接触したことで発生した摩耗減肉と推定しました。
また、伝熱管内面に有意な信号指示が認められた原因は、既往知見で ある応力腐食割れと推定しました。
5.対策
有意な信号指示が認められた伝熱管4本については、高温側および低温側管板部で施栓し、使用しないこととします。
管板、各管支持板上面に残存するスケールが次の運転サイクル中に伝熱管をきず付けないよう、小型高圧洗浄装置により、SG器内の洗浄を実施します。
また、長期的な信頼性を確保するという観点から、予防保全策として次回(第27回)定期検査においてSGの取替えを計画しています。
以上
添付資料1:高浜発電所4号機のECT信号指示管位置図
添付資料2:こ れ ま で の 経 緯 ( 高 浜 発 電 所 3 、 4 号 機 に お け る 伝 熱 管 の 外 面 減 肉 )
添付資料3:外面からの信号指示が認められた伝熱管の調査
添付資料4:内面からの信号指示が認められた伝熱管の調査
添付資料5:伝熱管の施栓方法と施栓状況
公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2025/pdf/20250901_2j.pdf