プレスリリース

powered by JPubb

本ページでは、プレスリリースポータルサイト「JPubb」が提供する情報を掲載しています。

2025-06-02 00:00:00 更新

住友化学と東京科学大学、強相関電子材料で次世代環境デバイス創出を推進~低消費電力メモリの実用化に向け2件の革新的成果を発表~

ニュース

住友化学と東京科学大学、強相関電子材料で次世代環境デバイス創出を推進
~低消費電力メモリの実用化に向け2件の革新的成果を発表~

2025年06月02日

住友化学と国立大学法人東京科学大学(以下、東京科学大学)は、2023年4月に共同で「住友化学次世代環境デバイス協働研究拠点」を設立し、次世代量子デバイスの重要材料の一つとして期待される強相関電子の実用化促進に向けた研究を進めてきました。このたび、強相関電子材料の応用先として期待される「低消費電力メモリ」において、低消費電力化につながる2件の革新的成果を得ることに成功しました。

成果1:強誘電体(AlScN)の自発分極を利用して強磁性体(CoFeB)の磁気異方性制御に成功
→デバイス制御における電力低消費化につながる技術として期待

成果2:BiFe0.9Co0.1O3において電場による磁化反転の新たな経路を発見
→素子設計の自由度が増し、高集積化・高性能化により、電力低消費化につながる技術として期待

近年、AI技術やデータストレージ技術の進化に伴い、記憶・演算素子によるエネルギー消費は増大しており、高性能で低消費電力の不揮発性メモリへの需要が高まっています。
本成果は、超低消費電力で駆動する次世代メモリの実用化に大きく寄与するものであり、今後、当社は本技術分野におけるトップランナー企業として、さらなる研究成果の拡大および早期の社会実装を目指します。

電子同士が強く相互作用しあう物質群は「強相関電子材料」と呼ばれ、超低消費電力で駆動可能な次世代メモリ、光や熱といった身近な環境エネルギーを高効率で電気エネルギーに変換する環境発電デバイスや水質浄化システムなどへの応用が期待されます。
当社は、強相関電子材料を、省エネルギーと創エネルギーの双方に資する次世代の基幹技術と考え、2023年4月より国立大学法人東京大学、国立大学法人東京科学大学、国立研究開発法人理化学研究所と、クロスアポイントメントを活用しながら共同研究を推進してまいりました。

※1 研究者などの人材が、大学や公的研究機関、企業のうち2つ以上の組織・機関に雇用されつつ、それぞれの所属先における役割に応じて研究・開発および教育に従事すること

  • 図:強相関電子材料のイメージ

住友化学は、今後も産学拠点間での研究開発を活発化させ、サステナブルな社会へのソリューションとなり得る革新的な新規技術基盤の確立および社会実装を推進してまいります。

各成果の概要

成果1: 強誘電体(AlScN)の自発分極を利用して強磁性体(CoFeB)の磁気異方性制御に成功
研究チーム:
角嶋邦之准教授のチームと住友化学拠点との合同チーム

内容:
省電力メモリへの需要に応えるため、不揮発性を有しながらDRAM※2にも負けない動作速度を有するMRAM※3が着目されていますが、実用化に向け、MRAMの制御に用いられるスピン偏極電流※4の省電力化が課題でした。
本研究では、強誘電体(AlScN)と強磁性体(CoFeB)の積層構造において、強誘電体の内部電場の方向を利用した、不揮発的な磁気異方性変化を見いだしました。この結果は、MRAMにおける電流書き込み動作の省電力化に寄与するとともに、書き込み耐性の改善にも貢献すると期待されます。

  • 図:強誘電体の内部電場方向による磁気異方性変化を示すKerr測定結果

※2 Dynamic Random Access Memory:キャパシタに電荷をためることで情報を保持する揮発性の記憶素子
※3 Magnetic Random Access Memory:磁化状態を情報として保存する不揮発性メモリ
※4 MRAMを構成する記録素子部である磁気トンネル接合(MTJ)の磁化制御に用いられる電子スピンの方向が揃った電流

成果2: BiFe0.9Co0.1O3において電場による磁化反転の新たな経路を発見
研究チーム:
東正樹教授のチーム、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)および住友化学拠点との合同チーム

内容:
マルチフェロイック材料※5であるBiFe0.9Co0.1O3は、室温で強磁性と強誘電性を有することで、超低消費電力で駆動可能な次世代磁気メモリへの応用が期待されますが、これまでに研究されていた薄膜に対し垂直方向の電場による磁化※6反転を利用した素子構造では、微細化が困難であり、実用化に必要とされる高集積化・高性能化に課題がありました。今回、従来とは異なる配向※7で成長させることで、印加した電場と垂直な磁化成分を反転できることを実験・理論計算の両面から実証しました。

  • 図:(a) 分極反転と磁化反転を評価するための白金電極の配置 (b)電場印加によって109度分極反転が生じている場所の強誘電・強磁性ドメイン像

この発見は、BiFe0.9Co0.1O3を用いた磁気メモリ素子の設計において、分極※8反転のための電極と、磁化反転を検出するセンサーの、より自由な配置を可能にします。これにより、磁気メモリ素子の高集積化・高性能化が期待され、次世代の磁気メモリの構築に大きく貢献いたします。

※5 強誘電性、強磁性、強弾性などの「強的(ferroic)」な性質を複数併せ持つ物質。電場を加えることよって物質の磁化が誘起される(電気磁気効果)など、従来材料とは異なる新奇な応答反応を示す
※6 電子が有する、スピンと呼ばれる内部自由度に由来する磁気の大きさ
※7 薄膜の結晶の向きのことで、薄膜を構成する物質のさまざまな性質に影響を及ぼす
※8 物質中で、陽イオンと陰イオンの重心のずれから生じる電荷の偏り

ご参考

【論文情報】
掲載誌:Applied Physics Express (APEX)
タイトル:Magnetism control of thin CoFeB layers by ferroelectric polarization
著者:Yan Wu, Kazushi Onimura, Hiroyuki Kobayashi, Satoshi Okamoto, Kuniyuki Kakushima

掲載誌:Advanced Materials
タイトル:Electric-field-driven reversal of ferromagnetism in (110)-oriented, single phase, multiferroic Co-substituted BiFeO3 thin films
著者:Takuma Itoh, Kei Shigematsu, Hena Das, Peter Meisenheimer, Kei Maeda, Koomok Lee, Mahir Manna, Surya Prakash Reddy, Sandhya Susarla, Paul Stevenson, Ramamoorthy Ramesh, Masaki Azuma

【関連リリース】
2023年03月28日付ニュースリリース「次世代量子デバイス実現に向けて産学連携で「強相関電子材料」の研究開始~「クロスアポイントメント」も活用し、早期の社会実装目指す~」

以上

お問い合わせ

住友化学株式会社
コーポレートコミュニケーション部
https://www.sumitomo-chem.co.jp/contact/public/


再生可能エネルギー等に関するプレスリリース
電力会社・ガス会社等によるプレスリリース

情報提供:JPubb

プレスリリース一覧に戻る