2024年11月14日
関西電力株式会社
美浜発電所3号機1次系冷却水クーラ海水系統戻り母管の減肉に関する原因と対策美浜発電所3号機(定格熱出力一定運転中)において、2024年10月5日に1次系冷却水クーラ※1の海水系統戻り母管※23系統(A、B、C)のうち、C系統母管の2箇所に塩の析出を確認しました。肉厚測定の結果、微小な穴とその周辺部分に減肉を確認したことから、原因調査をすることとし、10月15日にプラントを停止しました。
その後、プラントを冷温停止状態とし、C-1次系冷却水クーラ海水出口弁(以下、バタフライ弁※3)下流にある当該配管内を観察した結果、上半面にライニング※4の剥離があり、配管(炭素鋼)内表面に凸凹状の模様や炭素鋼の腐食を確認しました。このため、当該配管を切り出し、メーカ工場にて断面観察等の調査をすることとしました。
本事象による環境への放射能の影響はありません。
※1:1次系のポンプやモーター等で発生した熱を除去するための冷却水を海水により冷却する機器
※2:1次系冷却水クーラ出口から海水を海へ放出する配管
※3:操作ハンドルを回して弁棒を回転させ弁棒と結合した蝶型の弁体が回転し、 流量を調整する弁
※4:配管材料と海水が接触しないように配管内面を樹脂等でコーティングし腐食の発生を防止するもの。
(2024年10月10日、15日、29日お知らせ済)
当社は、調査結果や原因と対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に原子炉施設故障等報告書を提出しました。
1.調査結果
(1)主な工場調査結果
(外観観察、断面観察)
当該配管内表面を詳細観察した結果、微小な穴の周辺に凸凹状の模様があり、薄い錆の付着があることを確認しました。これは、キャビテーションによるエロージョン※5の特徴であることを確認しました。また、断面観察した結果、微小な穴の周辺の配管内面が全体的に減肉していました。穴の内部は、内面から外面につぼ状であることを確認し、このことから局部腐食が配管内面から外面に進行し貫通に至ったものと推定しました。 なお、き裂や割れなどは認められませんでした。
※5:液体の急激な圧力低下によって局部的に気泡が発生(キャビテーション)し、圧力回復によって気泡が消滅する際に衝撃圧が作用し材料が損傷する事象
(流動解析結果)
当該配管内の海水の流れを模擬した流動解析を実施した結果、ライニングの剥離が認められた当該配管内の上半面は、バタフライ弁下流に位置しているため、直管部と比較し流速が速く、圧力低下が生じ、キャビテーションによるエロージョンが発生することを確認しました。
(ライニング材の確認結果)
剥離があったライニングは、エポキシ樹脂系ライニングで施工されており、化学成分や膜厚、硬さ等を確認した結果、施工に問題のないことを確認しました。
また、エポキシ樹脂系ライニングは、これまでの知見からキャビテーションによるエロージョンに対して耐久性が低いことをあらためて確認しました。 これらの調査結果から、バタフライ弁下流で発生するキャビテーションによるエロ―ジョンの影響で、ライニングに部分的な剥離が生じたことにより、母材が配管内面から外面に向け減肉が進行し、貫通に至ったと推定しました。
なお、ライニングについては、前回の第27回定期検査(2023年10月~)において、ポリエチレンライニングの剥離が確認されており、その補修の際に、エポキシ樹脂系ライニングを採用していたことから、その経緯を調査しました。
(2)エポキシ樹脂系ライニングを採用して補修した経緯の調査結果
(ライニングの補修履歴)
美浜発電所3号機が1976年に運転開始した以降、1次系冷却水クーラの海水系統の配管では、ゴムライニングまたはエポキシ樹脂系ライニングを施工しており、当該配管ではゴムライニングを使用していました。
このうち、エポキシ樹脂系ライニングの補修頻度が多かったこと等から、第14回定期検査(1995年2月)において、保守性向上のため当該箇所をポリエチレンライニングが施工された配管に取り替えました。
(エポキシ樹脂系ライニングを採用した経緯)
当該配管については、母材に有意な減肉がなく腐食も無かったことから、当該箇所は厳しい流況ではないと認識していました。ポリエチレンライニングで復旧する場合は、工場においてライニング全面の張り替えが必要となり、重量物である配管の搬出入など計画外の作業も伴うため、他の補修方法を検討しました。
検討の結果、他の海水系統でも使用実績があり、現地施工が可 能なエポキシ樹脂系ライニングを採用しました。
2.推定原因
前回の第27回定期検査において、エポキシ樹脂系ライニングで補修した結果、ライニングが剥がれ当該箇所の配管母材が海水に接触したことで配管内面から外面へのキャビテーションによるエロージョンの影響で減肉が進行し、その後、局部的な腐食により貫通に至ったと推定しました。
3.対策
当該配管をポリエチレンライニングが施工された配管に取り替えます。 また、ライニングの標準的な補修方法や過去のライニング不具合情報をまとめたガイドラインを作成し、社内標準に反映します。
これに加えて、補修方法にかかる設計根拠や過去知見確認の重要性を再認識することを目的に、設備保修の担当課員を対象としたトラブル事例研修を実施します。
4.今後の予定
今後、当該配管をポリエチレンライニングが施工された配管に取り替え、健全性を確認した後、1次系冷却水クーラの海水系統を復旧する予定です。
その後、原子炉を起動し、定格熱出力一定運転に復帰する予定です。
以上
添付資料:美浜発電所3号機 1次系冷却水クーラ海水系統戻り母管の減肉に関する原因と対策
公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20241114_1j.pdf