2024年8月5日
NEDOグリーンイノベーション基金事業の成果、浮体式洋上風力発電のセミサブ型基礎製造における量産化コンセプトおよび水上接合工法を開発日立造船株式会社は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)により2021年に公募されたグリーンイノベーション(GI)基金事業「洋上風力発電の低コスト化」の内、「浮体式基礎製造・設置低コスト化技術開発事業」に鹿島建設株式会社とのコンソーシアムで採択されていましたが、このほど、その成果として、セミサブ型浮体式基礎の量産化コンセプトおよび水上接合工法を開発しました。
日本では将来的に浮体式洋上風力発電の普及が期待されていますが、浮体式基礎の製造能力が課題の1つとなっていました。現状では1基当たり15MW級の風車を搭載する浮体式基礎を製造できる造船ドックなどの施設は限られているため、製造期間を最短にすることが、浮体式基礎の量産化、ひいては風車数十基を有する大型洋上ウィンドファーム普及のカギとなります。
当コンソーシアムでは、セミサブ型浮体式基礎の量産化の実現を目指し、浮体式基礎の分割ブロックを造船・鉄構メーカーなどのサプライチェーン先で製造し、当社堺工場(大阪府堺市)へ曳航輸送後、ブロックを接合して浮体式基礎を大組立するというコンセプトのもと、新たに水上接合工法を開発しました。当社堺工場の検証では、本コンセプトおよび水上接合工法を採用することにより、これまで年間4基程度であった1工場あたりの製造能力を、年間20基程度に飛躍的に増加させることが可能となるという結果が得られました。
水上接合工法では、造船ドックなどに水を張った状態で分割ブロックを受け入れ、水上で仮接合を行い、排水後、溶接を行います。当初はブロック入渠後、排水を行い、大型台車やクレーンを用いて接合のための位置調整を行うことを検討していましたが、位置決めにはミリ単位の精度が求められるため、その重量や大きさから多くの時間を要することが課題でした。水上接合工法では、浮力の活用により重量による問題を軽減し、短時間でブロック同士の相対的な位置決めを行い、排水後直ちに溶接可能となることから、1割以上の大組立工程の短縮を実現できます。
当社は、本GI基金事業において、15MW級の風車を搭載することを想定した浮体式基礎の分割ブロックの接合部を実寸サイズ(幅:16m、高さ:7m)で製造し、2024年1月末~2月末まで堺工場でブロック接合の試験を行いました。これにより、本工法が技術的に実現可能であること、およびブロックの水上接合により大組立工程を1割以上短縮可能であることを確認できました。本工法は、工場での浮体式基礎の量産化に大きく寄与するだけでなく、建設地付近の港湾設備などでの現地組立が必要な場合でも有効と考えています。
当社は、NEDOより2024年6月に採択された「グリーンイノベーション基金事業/洋上風力発電の低コスト化プロジェクト」における「愛知県沖浮体式洋上風力実証事業」の実施コンソーシアムの1社として参画しています。同事業では、本コンセプトおよび水上接合工法を採用してセミサブ型浮体式基礎を当社堺工場で製造する予定です。浮体式洋上風力発電は、今後様々なプロジェクトが本格化すると予想されていますが、当社はGI基金事業で得られる成果を活かし、浮体式基礎の量産化や低コスト化に積極的に取り組んでいきます。
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