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2024年6月12日
国立研究開発法人情報通信研究機構
株式会社東芝
ルネサスエレクトロニクス株式会社
株式会社アイ・エス・ビー
沖電気工業株式会社
国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT(エヌアイシーティー))、株式会社東芝(以下東芝)、ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)、ランディス&ギアジャパン株式会社(以下ランディス&ギア)、株式会社アイ・エス・ビー、沖電気工業株式会社は共同で、電力スマートメーターシステムを利用してガス・水道メーター、特例計量器の検針を共同で行うため、Wi-SUN(注1) enhanced HAN規格を国際無線通信規格化団体Wi-SUNアライアンスにおいて正式に制定しました。同規格は共同検針を行うために定義された「IoTルート」用の無線標準規格として経済産業省次世代スマートメーター制度検討会で採用された規格です。さらにこの規格をもとに一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)が制定するホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10(注2)を改定し正式に発効されました。今回の規格発効により、Wi-SUNシステムを利活用したサービスがますます加速するとともに、日本国内における電力スマートメーターおよび、水道・ガスメーターや特例計量器などとの共同検針の実用化も前進します。
電力メーターに通信機能を具備させ、検針データの収集、メーターの制御を行う電力スマートメーターは、2013年から導入され、すでに数千万台導入されています。この電力スマートメーター用の無線通信規格として現在採用されている規格が、国際標準規格化団体Wi-SUNアライアンスで標準化されたWi-SUN HAN(Home Area Network)(注3)システムです。Wi-SUN HANは、この電力スマートメーターが住宅やビル内に設置されたエネルギー管理システムにつながる通信ルートである「Bルート」に主に採用されています。
一方で、水道・ガスメーターについては主に各事業者が独自の通信設備を用いて遠隔検針を行ったり、作業員が目視で、1軒毎に検針を行っていますが、投資効率および作業の効率性の観点から、電力スマートメーター経由で一括して検針するニーズが高まっています。
さらに2022年4月に特定計量制度が始まり、計量法の検定を受けていないメーターでも一定の基準を満たせば電力の取引等が行うことができるようになりました。このメーターは特例計量器と呼ばれ、EV充電システム、太陽光発電システム等に利用されています。これに伴い、特例計量器、ガスメーター、水道メーターからの検針データを各住宅等に設置された電力スマートメーターシステムを経由して共同検針する通信ルート「IoTルート」が定義されました(図1)。このルートにおける通信方式として、Wi-SUNアライアンスで標準化してきたWi-SUN enhanced HANシステムを採用することが適当であると経済産業省次世代スマートメーター制度検討会で2022年5月に取りまとめられました。Wi-SUNアライアンスでは、この採用を受け、「IoTルート」に適したWi-SUN enhanced HAN規格の制定がWi-SUN HANワーキンググループ(議長:NICT、テクニカルエディタ:東芝)で行われ、2024年2月に技術仕様、相互接続試験に必要となる仕様を含む正式な規格書をすべて発行しました。
図1 IoTルートの利用イメージ
(図内の無線端末にWi-SUN enhanced HANが搭載され、電力スマートメーターと接続)
上記の規格書をもとに国内の標準規格化団体である一般社団法人情報通信技術委員会が制定するホームネットワーク通信インターフェースの標準規格TTC JJ-300.10を改定し、2024年5月16日に正式に発効されました。今後 TTC JJ-300.10に準拠した無線端末を導入することで、水道・ガスメーターなどを活用した共同検針が可能となります。
この「IoTルート」に対応した無線通信規格Wi-SUN enhanced HANは以下の特徴を有します。
(a)ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末と電力スマートメーターが国際標準規格IEEE 802.15.4g(注4)で制定された物理層(注5)およびIEEE 802.15.4で制定されたMAC層(注6)を用いて接続可能です。また、IPv6による通信も可能です。従前から電力スマートメーターが導入されている通信認証規格によりセキュアに認証可能です。
(b)「IoTルート」用のアプリケーションを搭載するための通信インターフェースを具備しています。
(c)ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が通信するとき以外は電力を落としている通称「Sleeping device」であった場合も、接続するための通信手順が定義されています。
(d)ガス・水道メーター、特例計量器を管理する無線端末が屋外等にあっても接続できるように、1つの中継デバイス「Relay device」を介して中継できる機能を有しています。
このTTC JJ-300.10のドキュメントは以下で公開されております。
https://www.ttc.or.jp/application/files/2917/1616/4764/JJ-300.10v2.3.pdf [2.4MB]
今回のIoTルート用のWi-SUN enhanced HANの規格およびJJ-300.10規格の発効に伴い、今後、規格適合性および相互接続性試験用測定器の開発が行われる予定です。これに加えて、相互接続性や互換性の検証を行う相互接続試験を積極的に実施し、今後もこの規格を安定して動作させるための活動を積極的に推進し、共同検針の実用化に向けた動きを推進することで効率的なエネルギー管理システムの開発に貢献してまいります。
全世界で250社を超えるメンバーで構成されるWi-SUNアライアンス(2012年1月24日設立)がIEEE802.15.4 SUN(Smart Utility Network)規格をもとに利用モデルに応じて策定している国際無線標準規格。現在主にスマートメーターリングシステムを中心に全世界ですでに1億台以上の製品が導入されている。Wi-SUNアライアンスでは、Wi-SUNを利用する無線機等の製品に対し、メーカー間の相互接続性について認証している。NICT、東芝、ルネサスは、Wi-SUNアライアンスの創設メンバーであり、またこの3社およびランディス&ギアは、ボード(理事会)メンバーであり、現在、Wi-SUNアライアンスでは、家庭内の電力スマートメーター、家電、エネルギー管理システムを接続するWi-SUN HAN(Home Area Network)、屋外のメーター、モニター、センサー等各種機器を多段中継を用いて接続するWi-SUN FAN(Field Area Network)、国内のガスメーター間の通信方式であるWi-SUN JUTAをリリースし、商用化されている。
国内の情報通信ネットワークに関する標準化を扱う一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)が制定するスマートメーター、家電等のホームネットワーク用通信インターフェースの標準仕様。
家庭内の電力スマートメーター、家電、エネルギー管理システムを接続する通信規格。主に電力スマートメーターとエネルギー管理システムとの間を接続する「Bルート」用の通信規格およびエネルギー管理システムと家電、特例計量器等を接続するHAN用の通信規格が制定されている。Bルートに対応したWi-SUN HAN対応機器は国内のスマートメーターにすでに数千万台導入されている。最新のHAN通信仕様はWi-SUN enhanced HANであり、中継器を介して通信エリアを拡大する方法、Sleeping deviceと呼ばれる通信するときのみに電源が入るデバイスへの接続機能が制定されている。議長としてNICTの原田博司氏が、テクニカルエディタとして東芝の神田充氏が就任し、標準化を牽引している。
メーター、センサー、モニター等の各種機器間を接続するSUN(Smart Utility Network)のために米国電気電子学会(IEEE)が制定するネットワークの物理的な伝送、接続方式(物理層)を規定している。この標準化ではNICTの原田博司氏が副議長として標準化の取りまとめに貢献する等、多くのNICTの研究員が最終仕様策定の貢献者として表彰された。
ネットワークの物理的な伝送、接続方式を規定したもの。例として、無線信号の変調方式、符号化方式、通信のための基本パケットフレーム構成、スペクトルマスク等が挙げられる。
直接ネットワークで接続されている機器間の通信方式を規定したもの。
情報提供:JPubb