秋田県大潟村で稲わらからバイオ燃料などを製造する実証プラントが稼働 農業系バイオマスを利用した地域資源循環システム構築の実証実験
2024年5月30日
株式会社クボタ
株式会社クボタ(本社:大阪市浪速区、代表取締役社長:北尾裕一 以下、「当社」)は、京都大学を代表事業者とする環境省「地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業」※1において、京都大学や早稲田大学と連携し、2022年度より稲わらからバイオ燃料や肥料(バイオ液肥)を製造して農業や家庭で利用する地域資源循環システムの構築に向けた研究を進めています。
このたび日本有数のコメの生産地である秋田県南秋田郡大潟村において、実証実験施設を建設し、メタン発酵設備が本格稼働を開始しました。大潟村で回収した稲わらからバイオ燃料や肥料(バイオ液肥)を製造することの技術面の検証とともに、それらを地域利用するための仕組みの構築に取り組みます。
記
1.背景とねらい
- 日本国内で稲わらは年間約800万トン排出され、そのうち約650万トンが農地にすき込まれています。すき込まれた稲わらは肥料になる一方で、温室効果がCO2の28倍と言われるメタンガスを大量に発生させます。2022年度の日本の温室効果ガス排出量のうち稲作由来のメタンガスが約1.2%(CO2換算)を占めるため、脱炭素化に向けての大きな課題と位置付けられています。
- 今回の実証事業において、当社のメタン発酵技術や京都大学と早稲田大学が保有する革新的な触媒※2に関する製造および反応プロセス技術を用いて、地域で収集する稲わらからバイオガス、グリーン水素、グリーンLPG等のバイオ燃料を製造し、地域の農業や家庭で利用する仕組みの構築に取り組んでいます。また、稲わらからはバイオ燃料と同時に肥料(バイオ液肥)も製造し、農業生産にも資する地域資源循環システムを構築することで、現在はその多くが大気中へのメタンガスの発生源となっている稲わらを、地産地消型のエネルギー資源として有効活用することをめざしています。
- 当実証事業では、稲わらからバイオ燃料やバイオ液肥を製造する技術開発だけでなく、稲わらの収集やバイオ燃料・バイオ液肥の地域利用に向けた仕組みづくりのための課題抽出や検証を行うため、地域に根差したフィールド実証がとても重要です。
- 日本有数のコメの生産地として知られる大潟村では大量の稲わらが発生することに加え、同村の「バイオマス産業都市構想」には稲わらをメタン発酵させて製造するバイオガスや液肥の活用が含まれており、本実証事業との親和性が高いことから、大潟村でフィールド実証を行うこととしました。
2.実証事業の概要(当社受託範囲)
内容 | バイオマス地域資源循環システムの開発 |
役割 | クボタ | - 稲わら収集からバイオ燃料、バイオ液肥の地域利用までの仕組み作り
- 稲わら由来のバイオ燃料、バイオ液肥の製造および利用方法に関する技術開発
|
京都大学 | |
早稲田大学 | - 触媒の潜在能力を最大限に引き出す反応プロセスの開発
- 稲わら由来物からグリーン水素、グリーンLPGへの変換技術の開発
|
期間 | 2022年度~2029年度(予定) |
受託金額 | 約3.8億円(税込、2024年度) |
3.実証実験施設の概要
場所 | 秋田県南秋田郡大潟村内 |
構成設備 | 前処理設備、メタン発酵設備、保管設備等 |
敷地面積 | 約6,000m2 |
発酵槽容量 | 30m3 |
4.今後の予定
稼働したメタン発酵設備に加え、グリーン水素、グリーンLPGの製造設備も追加設置予定で、大潟村で収集した稲わらを原料とするバイオ燃料の製造実験を行います。
また、秋田県立大学および大潟村との共同研究を並行して行っており、秋田県立大学の試験ほ場において稲わら収集による温室効果ガスの削減効果やバイオ液肥の肥料効果を確認していきます。
ご参考
- ※1.環境省ホームページ:「令和4年度地域資源循環を通じた脱炭素化に向けた革新的触媒技術の開発・実証事業の公募採択案件について」https://www.env.go.jp/press/110715.html
- ※2.触媒:少量存在することにより化学反応の速度を加速させるが、自分自身は変化しない物質のこと。
排ガス処理等の用途では貴金属やレアメタルが触媒として利用されている。 - ※3.多元素ナノ合金触媒:異種の元素をナノレベルで隣り合わせ多彩な原子配列を取らせることによって、新たな物性を発現させた革新的な触媒。貴金属やレアメタルの抱える資源の枯渇化や価格高騰などの問題の解決につながることが期待されている。
以上
ニュースリリースに記載されている情報は発表時のものであり、最新の情報と異なる場合がありますのでご了承下さい。