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2024-05-02 00:00:00 更新

日本企業初 ブラジル沖の浮体式石油・天然ガス生産設備でのGHG排出量定量化プロジェクトを完了

プロジェクト

日本企業初 ブラジル沖の浮体式石油・天然ガス生産設備でのGHG排出量定量化プロジェクトを完了

2024年05月02日

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三井海洋開発株式会社(代表取締役社長: 宮田 裕彦、 以下「三井海洋開発」)と、日揮ホールディングス株式会社の海外事業会社である日揮グローバル株式会社(代表取締役社長執行役員:ファルハン・マジブ 以下、「日揮グローバル」)は、三井海洋開発がチャーター※1サービスを提供するブラジル沖のFPSO(Floating Production, Storage and Offloading system : 浮体式海洋石油・天然ガス生産貯蔵積出設備)において、メタンを含む温室効果ガス(以下、「GHG」)の排出量計測・定量化プロジェクト(以下、「本プロジェクト」)を完了し、このたびメタン等の排出削減対策に繋がる有意な結果がまとまりましたので、お知らせします。
操業中の FPSO を対象として、メタンと一酸化二窒素および代替フロンといった主要な GHG の排出量を正確に把握したことは、日本企業として初の成果となります。

1. 本プロジェクト実施の背景
三井海洋開発では、『中期経営計画 2024-2026』において、世界最高の FPSO ビルダー・オペレーターとして、安全性・高稼働時間と両立する最小の GHG 排出量を実現することをビジョン 2034 の取組みの一つとして掲げています。中核事業であるFPSO の脱炭素化推進の第一歩として、二酸化炭素のみならず、非常に高い温室効果を有しているメタンおよび一酸化二窒素※2や代替フロン等の排出量の把握を含め、FPSOからの GHG 排出量の計測・報告対応に積極的に取り組んでいます。
日揮グローバルでは、石油・ガス生産設備での GHG 排出削減に貢献するため、エンジニアリング技術力や豊富なプラント建設経験を活かし、MRV ※ 3手法を用いたメタン等の GHG 排出量計測サービス(HiGHGuard®)を提供しています。現在世界的に標準化された実計測の手法がない中で、プラント操業等の実態に即した信頼性の高い計測・定量化、およびそれに基づく低炭素・脱炭素化に向けた改善提案を行っています。
以上より、三井海洋開発と日揮グローバルは、両者の強みを組み合わせ、FPSO から排出されるメタンと一 酸化二窒素および代替フロンの正確な把握を目的とするプロジェクトを実施することとなりました。

2. 本プロジェクトの概要
本プロジェクトは、2023 年 7 月から同年 9 月までの間、ブラジルのリオデジャネイロ沖合で三井海洋開発がチャーターする 2 隻の FPSO にて実計測を行い、排出される上記 3 種の GHG の把握を行いました。
特にメタンは、近年その排出防止対策の必要性が高まっている一方、その排出は設備によるばらつきが大きく、一般的な係数を用いたデスクトップ(机上)算定では精度が不十分であるため、実計測による排出量の把握が国際的に強く推奨されています。このため、本プロジェクトでは、現場での手持ちセンサーや赤外線カメラを用いたボトムアップ手法と、ドローンを用いた上空からの把握によるトップダウン手法という2つの計測手法を組み合わせて実計測を実施しました(下記図 1 参照)。具体的には、ボトムアップ手法では FPSO 内でメタン排出の可能性がある約 15,000 箇所を計測しており、トップダウン手法では FPSO を囲うようにドローンが飛行することによりプラント全体の排出の俯瞰的把握を実現しています。

本プロジェクトより得られた成果の例は、次の通りです。
・ 従来のデスクトップ算定では得られない、高い精度でのメタン等の排出量を把握できたこと。
・ 複数の計測技術を組み合わせ、信頼性の高いメタン排出量把握の方法論を確立したこと。
・ FPSO 内におけるメタン排出箇所を個別に特定することができ、具体的な排出削減対策に繋がる結果を得られたこと。

図 1:FPSO におけるメタン実計測の模様
このリリースの画像:
https://www.jpubb.com/press/image.php?image=3213378


表 1:2つの計測手法の特徴

計測手法ボトムアップ手法トップダウン手法
計測機器手持ちセンサー、赤外線カメラ等ドローン搭載型センサー
メタン実計測対象個別排出源プラント全体、メジャー排出源

今回適用した手法は、メタン排出削減のための国際組織「石油・ガスメタンパートナーシップ 2.0」(OGMP2.0※4)の設定する報告フレームワークにおいて、最高水準の Level-4 および Level-5 の要件※5を満たしたものとなります。
実計測結果について検証したところ、2つの手法の組み合わせにより、従来の一般的な係数を用いたデスクトップ算定※6と比較して、はるかに精度の高い GHG 排出量の定量化を実現していることが確認できており、計測結果は国際的に高い信頼性が得られるものと考えられます。

3. 今後の方針
三井海洋開発は、海洋石油・ガス開発業界におけるリーディング・カンパニーとして、GHG 排出量算定の精緻化・排出量データの開示範囲の拡大に取り組むとともに、チャータービジネスの一環として、OGMP2.0 等に適合し、かつ現場への負担を最小限とした排出量定量化の提供や、排出量削減施策の立案・実施などの付加サービスを通じて顧客価値を創造していきます。さらに、研究開発等を通じた新規技術獲得・実証に基づくFPSO の設計及び操業の改善を通じ、三井海洋開発が提供する FPSO サービスにおけるカーボンインテンシティの低減を実現し、世界のエネルギーサプライチェーンの脱炭素化に貢献してまいります。

日揮グローバルは、引き続き各業界のメタンをはじめとした GHG 排出の低減に貢献するため、排出量の定量化・削減に関するリーディング企業を目指してまいります。特にメタン排出の定量化においては、従来のデスクトップ算定に代わって実計測の要求が国際的に高まっていることから、本プロジェクトの成果等も踏まえ、信頼性の高い実計測手法、排出削減対策等をパッケージのソリューションとして提供していく考えです。
また、日揮ホールディングス 技術研究所(茨城県大洗町)に保有する「メタン排出計測技術評価設備」を活用し、国内外のセンサー等のメーカーの方々とのパートナーシップを進めることを通じ、最先端の計測技術をいちはやく定量化プロジェクトの中で活用できるよう取り組んでまいります。

  • ※1 : FPSO を石油開発会社へリースするのと同時に乗組員を提供して O&M(運転オペレーションおよび保守点検サービス)も請け負うこと。
  • ※2 : メタンは、地球温暖化に与える影響が 100 年間で CO2 の 28 倍程度、一酸化二窒素は、100 年間で 273 倍程度とされており(いずれも IPCC による)、近年その影響度の高さが注目されています。2021 年 11 月の COP26 で発足したメタン排出削減のイニシャティブである「グローバル・メタン・プレッジ」には、現在 150 か国以上が署名しています。
  • ※3 : Measurement(計測)、 Reporting(報告)、Verification(検証)の略称。
  • ※4 : OGMP は 2014 年に発足し、2020 年に国連環境計画(UNEP)の主導によって、OGMP2.0 が現在の包括的なメタン排出に関する報告フレームワークとなりました。Shell、BP、TotalEnergies、Petrobras、PETRONAS、PTTEP等、世界の主要な石油・ガス企業が加盟しています。
  • ※5 : OGMP2.0 では 5 つのレポーティングレベルが設けられており、Level-4 および Level-5 要件ではサイトでの実計測が必須となります。OGMP2.0 加盟企業は加盟後、自社操業アセットについては 3 年以内に、ジョイントベンチャーについては 5 年以内に Level-4 以上の報告を行うことが求められています。
  • ※6 : API Compendium など活動量と排出係数の積算によって GHG 排出量を算定する方法。

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