2 0 2 4 年 2 月 6 日
関西電力株式会社
高浜発電所1号機のB給水ブースタポンプ入口配管からの
蒸気漏れに関する原因と対策について
高浜発電所1号機(加圧水型軽水炉)は、定格熱出力一定運転中、1月21日にB給水ブースタポンプ※1(以下、ポンプ)入口配管(2次系)の一部から僅かな蒸気漏れを確認したため、1月22日に待機中のCポンプを起動し、Bポンプを停止しました。その後、Aポンプのグランド部※2からの2次冷却水の排水量が通常よりも多いことを確認したため、電気出力を40%にした上で点検等を実施しました。
現場確認の結果、Bポンプ入口配管のベント管の管台付け根付近からの漏えいであったことから、浸透探傷試験※3を実施したところ、管台溶接部に沿った浸透指示模様が認められました。また、当該ベント管※4頂部に凹みがあることを確認しました。このため、当該部を切り出し、メーカ工場等にて破面観察等の調査を実施することとしました。
Aポンプについては、グランド部の点検等の結果、異常は認められませんでした。
本事象による環境への放射能の影響はありません。
※1:主給水ポンプの吸込みを補助するために設置している装置
※2:ポンプの軸シール部であり、2次冷却水が、回転軸の貫通部から外部に必要以上に流出しないよう水で封じている。
※3:試験体表面に開口しているきずを目で見やすくするため、可視染料の入った高浸透性の液を浸透させた後、余分な浸透液を除去し、現像剤により浸透指示模様として観察する方法
※4:入口配管への通水時の空気抜きを目的として設置している管
(2024年1月22日、31日お知らせ済)
当社は、調査結果や原因と対策を取りまとめ、本日、原子力規制委員会に原子炉施設故障等報告書を提出しました。
1.調査結果
(1)工場調査結果
漏えい箇所を対象に、X線CT調査を実施した結果、浸透指示模様と同様の位置に約42mmの貫通指示を確認しました。
破面観察の結果、おおむね平坦でビーチマーク模様※5を確認しました。また、模様の様相から、ベント管外表面を起点にきずが発生し、内側に進展したと判断しました。
ベント管頂部の凹み部分を観察した結果、深さ約0.6mmであり、表面に接触痕が認められました。
なお、材料分析の結果、材質に問題はありませんでした。溶接部について放射線透過試験※6およびX線CT調査を実施した結果、溶接欠陥等の異常は認められませんでした。
※5:疲労割れに観察される特徴的な破面模様の一つで砂浜に残る波跡に似た縞模様
※6:試験対象物を透過する放射線を利用して、試験対象物の内部構造等(内部欠陥の有無等)を画像化することにより確認する手法
(2)蒸気漏えいのメカニズムに係る調査結果
(架台梁との接触に関する調査)
ベント管切出し前に、ベント管頂部と架台梁の隙間を計測した結果、約5mmであったことを確認しました。
ベント管の上部にある架台梁※7との接触の可能性を調査するため、架台梁の外観観察を実施した結果、ベント管頂部の凹み部分と同様に縦約10mm×横約15mmの接触痕を確認しました。
ポンプ入口配管およびベント管は、プラント運転により熱伸びする箇所であり、その熱伸び幅は約5.5mmと評価しました。このため、プラント運転時には、ベント管頂部と架台梁が接触していたと推定しました。
※7:設備やグレーチング等を設置する構造物のうち水平面にかけられている部材
(架台梁の施工履歴)
架台梁の施工履歴を確認した結果、第21回定期検査の直前(2002年11月)のプラント運転中に、入口配管の振動測定を実施するため、一時的に取り外していたことを確認しました。取り外した架台梁については、第21回定期検査開始後、取外し前の状態より僅かに下方にずれた状態で復旧した可能性があると推定しました。
(きずの発生に関する調査)
ベント管頂部と架台梁の接触により、ベント管付け根部には、曲げ応力が作用し、ベント管頂部が固定された状態となっていました。さらに、ポンプの運転に伴う振動により、疲労限度※8を超える繰返し応力が加わることが分かりました。
過去のBポンプの運転履歴を調査した結果、第21回定期検査(2002年11月)以降、6サイクル運転しており、破面観察の結果等も踏まえると、きずは、第21回定期検査終了後のプラント運転時に発生したと推定しました。
※8:疲労損傷を起こす応力
(3)類似箇所の調査結果
A、Cポンプのベント管の外観観察を実施した結果、ベント管頂部に 接触痕がないことを確認しました。また、浸透探傷試験を実施した結果、異常は認められませんでした。
2.推定原因
第21回定期検査(2002年)の架台梁の復旧作業において、ベント管頂部と架台梁との隙間が十分に確保されず、プラント運転中は配管等の熱伸びによりベント管頂部と架台梁が接触し、ベント管付け根部に曲げ応力が発生する状態となっていました。
この状態でBポンプの運転に伴い、ベント管付け根部に振動も加わることで、きずがベント管の外表面に発生し、内面へ徐々に進展し貫通に至り、蒸気漏れが発生したと推定しました。
3.対策
損傷したベント管については新品に取り替えるとともに、入口配管等の熱
伸びが発生しても接触しないよう架台梁の形状を変更します。
発電所内で工事を実施した際は、高温状態の配管等が熱伸びで周辺機器
と接触していないか工事完了後に確認する旨を社内マニュアルに反映します。
4.今後の予定
今後、損傷したベント管を新品に取り替えた後、Cポンプを起動し出力上昇を行い、定格熱出力一定運転に復帰する予定です。
その後、ポンプの運転をA、CポンプからA、Bポンプに切り替えます。
以上
添付資料:高浜発電所1号機のB給水ブースタポンプ入口配管からの蒸気漏れに関する原因と対策
公式ページ(続き・詳細)はこちら
https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2024/pdf/20240206_2j.pdf