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【上川外務大臣】私(上川大臣)から2件ございます。まず、1点目についてであります。
本年最後の記者会見に臨むに当たりまして、私(上川大臣)から、今年を振り返りつつ、来年に向けた抱負を述べさせていただきます。
外務大臣として、ウクライナや中東を始め、目まぐるしく変化する国際情勢に向き合う中で、私(上川大臣)は、大きな変化の中で揺らぎなく、日本の国益を守り、存在感を高めていくには、強さと共に柔軟性、「しなやかさ」が不可欠だと感じ、「靱(しなやか)」という字を、今年の一文字に選びました。(色紙を掲示しつつ)こういう字であります。
この「靱」という字でありますが、経済安全保障におけるサプライチェーンの強靱性などで、今年よく使われました。私(上川大臣)自身は、この考え方は、我々の民主主義の在り方にも通じると考えております。
今、国際社会では、民主主義の真価が問われています。多様な意見を集約する民主主義のシステムは、権威主義のシステムに比べて、一見非効率にも見えます。しかし、私(上川大臣)は、民主主義には、多様性と包摂性を尊重できるという「しなやかさ」が備わっており、平和や個人の自由を守るために、本質的に重要であると考えております。民主主義を守ることは、日本外交の重要課題であります。
その上で、来年も強化していきたい外交の具体的取組についてであります。
まず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に、引き続き取り組んでまいります。「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を更に発展させ、実践的協力を広げてまいります。政府安全保障能力強化支援(OSA)の実施や、経済安全保障、サイバーセキュリティの強化に加え、長年「司法外交」を提唱してきた私(上川大臣)として、「法の支配」の取組も積極的に展開してまいります。
次に、経済外交のフロンティアを開拓する取組であります。戦後日本が、開発支援や企業活動を通じて、地域、世界に貢献し、築いた信頼を礎に、グローバル・サウスの成長を取り込みながら、ODAも活用した官民連携を進め、より強く、しなやかな経済力で、世界に存在感を示してまいります。
また、女性・平和・安全保障(WPS)を始め、新たな外交分野に取り組み、幅広いステークホルダーも巻き込むことで、日本外交をより強くしなやかなものとしてまいります。
2024年は、多くの国等で重要な選挙が控えており、国際情勢は、重要な局面を迎えると考えます。世界が歴史の転換点にある中で、大きな変化の流れをつかみ取り、我が国の安全保障や繁栄を守るため、来年も私(上川大臣)は、「しなやかさ」を忘れず、国際社会の高い期待や信頼に、着実に応える日本外交を進めていきたいと思います。
【上川外務大臣】続きまして、2点目であります。
外務省は、2007年に日本国際漫画賞を創設し、優秀な海外の漫画作品を外務大臣名で表彰しております。
第17回目を迎える本年は、82の国や地域から、過去最多となる587作品の応募がありました。毎年、アジア、中南米、欧州等幅広い地域から応募がありますが、今回は、エチオピア、コモロ、セネガル、ルワンダのアフリカ4か国から初めて応募がありました。
今般、審査委員会により、台湾から応募されたジェン・ジャーチェン氏の「青空のもと、風追う少年」が最優秀賞に選ばれました。また、優秀賞は、スペイン、ベトナム、香港から3作品に決定しました。そのほか、奨励賞2作品、入賞5作品が決定しています。
国際交流基金を通じて、最優秀賞及び優秀賞受賞者を日本にお招きし、授賞式を明年3月に都内で開催する予定であります。
私(上川大臣)も、外国訪問のたびに、漫画の人気の高さ、特に、若者の漫画への熱意を肌で感じ、多くの国・地域で、日本文化に関心を持ってもらうきっかけとなっていることを実感してまいりました。活字議連の一員としても、立派な活字文化であります漫画を通じた国際交流の推進を後押しすべく、日本国際漫画賞を通じ、漫画の普及に努めてまいります。
私(上川大臣)からは、以上であります。
失礼します、ちょっと訂正いたします。先ほど、奨励賞2作品と、入賞につきましては、ちょっと読み間違えまして、「9作品」であります。訂正いたします、お詫び申し上げます。
【共同通信 桂田記者】冒頭のご発言に関連して、来年の外交日程について伺います。2月19日に予定されている日・ウクライナ経済復興推進会議について、期待される成果を教えてください。
また、現在ウクライナに全土には「退避勧告」が出ており、首都キーウへの攻撃も増えていますが、日本企業に復興投資を呼びかけるにあたり、政府として、どのようにサポートしていくお考えでしょうか。
【上川外務大臣】まず、日本ウクライナ経済復興推進会議、これに対しましての期待する成果でございます。
ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。欧州・大西洋とインド太平洋の、この安全保障は、不可分であるとの認識の下、自らの問題として、この問題に取り組んでまいりました。
また、一日も早く、公正かつ永続的な平和を実現すべく、ウクライナを強力に支援し続けていかなければなりません。この点、ウクライナの人々が、短期・中長期的な未来を思い描けるようにするためにも、今の段階から、人道支援や復興支援を行っていくことが必要と考えております。
ウクライナの復興需要は莫大でありまして、民間セクターの関与も得ることが必要不可欠であります。ウクライナの復興を我が国として力強く支えていくため、日本の様々な民間の関係者に、一層関与いただくことが重要と考えております。
こうした観点から、来年2月19日に開催する経済復興推進会議の場を、官民一体となった復旧・復興の取組を更に力強く推進する契機とし、同時に、対ウクライナ支援に係る国際的気運を盛り上げる機会とするべく、準備を進めております。
続きまして、日本企業に復興投資を呼びかけるに当たっての、政府としてのサポートにつきましてお尋ねがございました。
危険情報は、渡航・滞在に当たって、特に注意が必要と考えられる国・地域について、特に、邦人の生命・身体に対する脅威を考慮して、治安情勢等を総合的に判断した上で、発出するものでございます。現在、ウクライナにつきましては、引き続き、全土に「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。」との危険情報を発出しております。
戦時下のウクライナとの貿易・投資は、民間企業にとりまして、リスクが高いことは事実でありますが、ウクライナの復旧・復興推進していく必要性は、G7を始め、国際社会において広く共有をされているところであります。
政府としては、そうしたリスクを十分に認識しておりまして、邦人の安全を第一に考えつつ、困難な状況下でも、必要な企業活動を進める方途につきまして、ウクライナ側ともご協力しながら、検討をしてまいる考えでございます。
【朝日新聞 松山記者】冒頭ご発言のあった点ともちょっとかぶるんですが、OSAについて伺います。外務省は、OSAを所管する総合政策局の安全保障協力室を、8月に安全保障協力課に格上げするという報道があります。これの事実関係と、格上げされる課の規模感について教えてください。
また、外務省は、2024年度当初予算案に、OSA関連予算は50億円計上し、昨年度、23年度から30億円増額した一方、ODAは減額となりました。日本は、これまで、途上国の経済社会開発援助を日本外交の象徴としてきましたが、安全保障能力を強化するOSA強化を踏まえ、どのような外交につなげていく狙いか、教えてください。
また、先日閣議決定された防衛装備移転3原則と、その運用指針の見直しに伴い、OSAで武器供与拡充することが、かえって地域の緊張を高めるのでは、という指摘もありますが、その点についての大臣のお考えもお願いします。
【上川外務大臣】まず、事実関係を申し上げたいと思いますが、OSAは、同志国の安全保障上の能力や、また、抑止力の強化に貢献することによりまして、我が国にとりまして望ましい安全保障環境の創出や、また、国際的な平和と安全の維持・強化等に寄与することを目的とするものでございます。
厳しさを増す国際情勢の中で、OSAの重要性は、ますます増しておりまして、外務省としては、このOSAを更に戦略的に強化していく考えであります。
その観点から、政府予算案には、今年度の約2.5倍となる50億円を盛り込んだところであります。また、OSAを適切に実施していく観点から、安全保障協力課を設置をいたしまして、体制を強化していくこととしたところであります。
その上で、ODA関連予算は減額となりましたが、ODAが重要であることは、いささかの変わりもございません。ODAの効果的・戦略的な活用に努めてまいりたいと考えております。
また、外務省予算でありますが、この我が国をめぐります諸課題及び外務省の状況など、諸般の事情を踏まえて、総合的に検討されるべきものと考えております。
その意味で、ODA関連予算では、令和6年度予算案に関して減額となったところでありますが、このODAもOSAも重要な外交ツールでありまして、ODAがそれで重要性を失っているとの指摘については、この点は、いささかの変わりもないということを強く申し上げたいと思っております。
国際的な情勢を踏まえて、日本の安全保障の環境をどう改善していくのか。あるいは、そうした新しい状況に応じた体制をどうとるのか、ということにつきましては、まさに外交の中で、戦略的、また大きな方針の中で進めていくべきことというふうに考えておりまして、これ、政府全体の方針との整合性も含めて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。
【共同通信 桂田記者】冒頭ご発表のあった日本国際漫画賞について、最優秀賞作品の選定理由を教えてください。
【上川外務大臣】この最優秀作品でありますが、第二次世界大戦末期に、短距離走への情熱を通じて友情を育んだ日台の少年と、その家族の感動の物語と承知しております。
私(上川大臣)も、それをちょっと拝見させていただきましたけれども、非常に力強く、一筆一筆に力を込めて、作品を仕上げてらっしゃったという様子がよく分かる作品でなかったかなと、個人的には思っているところであります。
今年、文化功労賞に選ばれました漫画家の里中満智子審査委員長を始め、審査員の皆様からは、そのストーリーの構成と、短距離ランナーと機関車の併走を描いた作画の素晴らしさが特に評価をされ、最優秀賞作品に選出されたと承知しているところであります。
漫画文化の発祥の日本国といたしまして、この賞の授与を通じ、漫画文化の一層の国際的な発展に貢献してまいりたいと考えております。
【北海道新聞 荒谷記者】北方四島周辺海域の安全操業について伺います。ロシアが今年7月に操業状況を決める政府間交渉に応じない方針を日本側に伝えて以降、実施のめどが立っていません。交渉の現状や見通しと、打開に向けた方策をどのように考えていらっしゃいますか。また、地元への説明の機会などを考えていますか、伺います。
【上川外務大臣】北方四島周辺水域操業枠組協定に基づく操業につきましては、本年1月に、ロシア外務省から在ロシア日本国大使館に対しまして、現時点で、政府間協議の実施時期を調節することができない旨の通知があったところであります。
現下のウクライナ情勢の責任は、全面的にロシアにあるにもかかわらず、ロシアが、このような対応を取ったことは受入れられず、ロシアとの間では、枠組協定の下での操業を早期に実施できるよう、様々なレベルで調整を行ってきております。しかし、現時点におきまして、ロシア側から操業実施に向けた肯定的な反応は得られていない状況であります。
政府といたしましては、この枠組協定の下での操業を早期に実施できるよう、引き続き、ロシア側に働きかけてまいりたいと考えております。
また、地元への説明に関しましては、直近では、今月の15日に、欧州局審議官が北海道に出張し、関連の漁業者の方々に対しまして、説明を行ったところでございます。引き続き、地元の関係者の皆様と、丁寧に意思疎通を図ってまいりたいと考えております。
【北海道新聞 荒谷記者】話題変わりますけれども、ロシアメディアの一部報道で、ロシア北極圏のLNG開発事業の「アークティックLNG2」をめぐって、米国の制裁を理由に、権益を持つ日本などの外国企業が参画停止を表明したと報じられています。日本政府は、エネルギー権益維持のために、このLNG2は、重要なプロジェクトとの立場だと思われますけれども、事実関係について、政府が把握している点と今後の対応について伺います。
【上川外務大臣】御指摘の報道は承知しているところであります。
その上で申し上げますが、本件につきましては、民間企業同士のやり取りが含まれるところでありまして、政府として、その事実関係についてコメントすることにつきましては、控えさせていただきます。
いずれにいたしましても、日本政府としては、我が国のエネルギー安定供給を損なうことのないよう、総合的に判断をし、そして、適切に対応してまいりたいと考えております。
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
パン・オリエント・ニュースのアズハリです。
ガザの状況について質問します。日本は、ガザに関して最近発表されたエジプトの提案、両陣営の捕虜の交換が行われる人道的停戦を求めるエジプトの提案を支持しますか。これには、パレスチナの総選挙と大統領選挙への道を開く国民対話の創設が続きます。そしてエジプトの提案の第三段階は、イスラエル占領軍がガザから撤退する完全かつ包括的な停戦であり、これはイスラエル軍によるパレスチナ人に対するジェノサイドを終わらせるために、全体の状況に希望を与えるものです。ありがとうございました。
【上川外務大臣】御指摘いただきましたエジプトの提案でございますが、これに係る報道につきましては、承知しているところでございます。
ただ、第三国の動きにつきまして、逐一コメントをすることについては差し控えたいと思います。
いずれにいたしましても、ガザにおきましての危機的な人道状況を改善すること、また、人道支援活動が可能な環境の確保が、まず必要でありまして、エジプトを含め、関係国・関係機関が、現地の人道状況の改善等のために、精力的な外交努力を行っていると承知しております。
我が国といたしましても、引き続き、こうした関係国・関係機関との間で緊密に意思疎通を行いつつ、人質の即時解放、また、人道状況の改善、そして、事態の早期沈静化に向けまして、外交努力を、これまで以上に、粘り強く積極的に続けてまいりたいと考えております。
【アナドル通信社 メルジャン記者】イスラエルによるガザ地区への攻撃で、2万人の罪のない民間人が命を落としていました。日本が、イスラエルのガザ攻撃に、直接的又は間接的に、資金的なサポートをしたかどうか、知ることはできるのでしょうか。中東の危機の解決ために、新年に、日本の外交及び民間の潜在的な取組は、どのようなものになるでしょうか。日本は、イスラエルに停戦を求めない立場を続けるつもりなのでしょうか。中東の紅海でのフーシ派の攻撃を受けて、日本は、米国が結成した有志連合に参加するつもりなのでしょうか、お願いします。
【上川外務大臣】まず、現下のイスラエル・パレスチナ情勢に関する日本の立場及び日本の外交努力についてのお尋ねがございました。
日本の立場は、これまでも繰り返し述べてきたとおりでございます。
政府として、これまでも、二国間における様々な外交上のやり取りや、国連安保理等国際場裡における関係国との不断の議論を精力的に行ってまいりました。
私(上川大臣)自身、議長としてG7外相声明、これは2度にわたりますが、11月8日と11月29日に取りまとめたほか、安保理決議採択におきまして、また、カイロ平和サミット、また、イスラエル・パレスチナ・ヨルダン訪問、また、ジュネーブで開催されましたグローバル難民フォーラムの機会や、また多くの電話会談等におきまして、関係国への様々な働きかけを行うなどの外交努力を行ってきたところでございます。
とりわけ、安保理がその責務を果たし、適切な意思表示を行うことができるよう、精力的な調整・交渉を行い、その観点から、ガザ地区における児童の保護に焦点を当て、人道的休止やハマス等による人質の即時・無条件の解放の要請を含みます、先般の安保理決議採択を歓迎したところでございます。
我が国といたしましては、引き続き、関係国・国際機関との間で、しっかりと意思疎通を行いつつ、全ての当事者に、国際人道法を含む国際法の遵守や、また関連の安保理決議に基づきまして、誠実に行動することを求めつつ、人質の即時解放、人道状況の改善、そして事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けてまいります。
また、日本は、イスラエル・パレスチナ紛争の「二国家解決」及びパレスチナの独立国家樹立の権利を含む民族自決権、これを一貫して支持してきております。独立国家対立に向け努力しているパレスチナ人を長期にわたりまして、政治、そして、経済両面から支援してきたところでございます。
今後も「二国家解決」の実現に向け、イスラエル及びパレスチナのほか、関係国とも議論していくとともに、「平和と繁栄の回廊」構想などの独自の取組を通じて、当事者間の信頼醸成等に取り組んでまいりたいと考えております。
最後に、NGOを通じました支援についてのお尋ねがございました。
現在、ガザ地区の危機的な人道状況を受けまして、政府として、総額7,500万ドルの人道支援を行っておりますが、このうち、日本のNGOによる協力としてジャパン・プラットフォーム(JPF)を通じ、食料、生活物資、保健・医療、水、衛生などの分野におきまして、約440万ドルの支援を実施する予定でございます。
今後も、現地のニーズに沿った支援につきまして、スピード感を持って、不断に検討してまいりたいと考えております。
また、最後に、紅海におきましての事案につきましてご質問がありましたが、これまで、米国を含む関係国と、様々なやり取りを行ってきておりまして、現行の枠組みも踏まえまして、慎重に検討しているところであります。
詳細につきましては、相手国との関係もございますので、お答えにつきましては、差し控えさせていただきたいと思います。
情報提供:JPubb