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2023年12月22日
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
株式会社日立製作所
東レ株式会社
NEDOの委託事業である「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」(以下、本事業)の一環として、株式会社日立製作所(日立)と東レ株式会社(東レ)は、サウジアラビア海水淡水化公社(SWCC)と共同で、サウジアラビアのドゥバにあるSWCCの海水淡水化プラント実証サイトで、省エネルギー型海水淡水化システムの実証事業を実施し、従来型の逆浸透膜法(RO膜法)を用いたシステムに比べ約2割の省エネルギー化を実現しました。
本事業では、日本国内で確立した技術「Mega-ton Water System」を基に、海水から日量1万トンの飲料水を生産する設備を設置し、本海水淡水化システムの優位性を実証しました。本事業を通して、安定した運用の実績や商用化に必要なデータも取得できたことから、今後、同国内だけでなく、水資源が不足する国・地域への事業展開を目指します。
サウジアラビアは世界最大の原油生産量を誇る資源国である一方で、降雨量が少ないため淡水資源が乏しく、都市部に供給する水の大部分を海水淡水化に依存し、慢性的な水不足が問題となっています。同国では、海水淡水化方式として、かつて主流であった蒸発法※1に替わって、現在は比較的エネルギー消費量が少ないとされる、逆浸透膜法(RO膜法)※2が主流となっていますが、依然、多くのエネルギーを必要とすることが課題です。増大し続ける水需要に対応するために、より少ないエネルギーでより多くの海水を淡水化する技術が求められています。
NEDOは、2009年度から2013年度まで内閣府の研究開発事業「Mega-ton Water System※3」プロジェクトに研究支援機関として参画し、民間企業や大学などとともに、省エネルギー型海水淡水化技術「低圧多段高収率海水淡水化システム」を確立しています。そこでNEDOは、本事業※4の一環として、サウジアラビアにおける水不足問題を解決するため、「Mega-ton Water System」の成果を活用した実証事業開始を、サウジアラビア海水淡水化公社(SWCC)と合意し、2017年12月11日に基本協定書(MOU)を締結※5しました。また、2018年3月19日には、本事業の委託先である日立と東レが、同じくSWCCとの間で協定付属書(ID)を締結しました。
NEDOと日立、東レはSWCCと共同で、サウジアラビア北西部のタブーク州ドゥバにあるSWCCの海水淡水化プラント内に「低圧多段高収率海水淡水化システム」を設置し、本事業を実施してきました。
その結果、サウジアラビアで定められた飲料水質基準を満たす日量1万トンの飲料水を、従来のRO膜法に比べ、約2割の省エネルギー化を実現しながら安定して供給することに成功し、「低圧多段高収率海水淡水化システム」の優位性を実証しました。
図1 実証サイトに設置した低圧多段高収率海水淡水化システム
「低圧多段高収率海水淡水化システム」は、蒸発法に比べエネルギー消費量が少ないとされるRO膜法による海水淡水化をさらに省エネルギー化するものです。その仕組みは、従来に比べ低い圧力でも高い性能を発揮する新型RO膜法の採用や、膜ユニットの配置を多段化することなどで、高圧ポンプ稼働などのエネルギー消費を約2割削減します(図2)。
図2 低圧海水淡水化RO膜の優位性と実証システム技術の詳細
実証事業では、実海水塩濃度:42000mg/L程度の条件において、高圧ROシステムの収率※6が従来方式40%に対し、52~55%に向上することを実証し、収率向上に伴う運転圧力上昇を、低圧海水淡水化RO膜を用いることで低下させ、高収率運転を実現しました。この二つの技術を適用したシステム、および濃縮水に加えて、透過水からもエネルギーを回収するシステムを構築したことで、造水量あたりの消費電力量は従来方式の4.76kWh/m3に対し3.66kWh/m3での運転を実現し、約2割(約23%)の省エネルギー化を実現しました。また高収率化により、原海水量を低減できるため、取水・前処理設備の設備容量の低減(容量比約25%削減)を併せて実証しました。
NEDOは本事業を足掛かりに、日本の優れた淡水化技術でサウジアラビアのみならず、渇水地域の水問題解決に貢献することを目指します。
日立と東レは、省エネルギー化による経済的メリットや環境負担低減となる淡水化技術を生かし、水資源が不足する国・地域に対して、先進の水環境ソリューションの提案を進め、引き続き水インフラの整備や課題解決へ取り組みます。
NEDO 環境部 担当:中原、中村、森、四十宮 TEL:044-520-5249
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情報提供:JPubb