「第 36 回 独創性を拓く 先端技術大賞」産経新聞社賞を受賞
-非遺伝子組換え技術によるバイオマス分解酵素自製化の研究開発が評価-
2023.07.21
東レ株式会社
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大矢 光雄、以下「東レ」)は、このたび、産経新聞社が主催する「第36回 独創性を拓く 先端技術大賞」において、「非可食性バイオマスからの糖製造向け新規酵素の技術開発」の取り組みが評価され、「産経新聞社賞」を受賞しました。
東レは、作物残さなどの食用にできない植物資源(非可食バイオマス)からモノマーを製造するプロセスの実現に向けた実証検討を行っています。2030年近傍を目標に、非可食バイオマスから化学品を製造するトータルサプライチェーンを構築することで、持続可能な資源循環型社会の実現を目指しています。
この取り組みにおいて、東レは、バイオマスの構成成分である食物繊維を糖に分解する酵素を高生産する微生物(東レ呼称「T1281」)を、独自に開発しました。
そして、T1281が、バイオマスから単糖(グルコース、キシロース)のみ製造可能な酵素を生産するのに対して、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の医療用重粒子線加速器「HIMAC」を使用して、T1281に重イオンビームを照射し遺伝子改良を行った結果、グルコースと、キシロースが複数結合した多糖(キシロオリゴ糖)が製造可能な酵素を大量に分泌生産する、新規微生物(東レ呼称「T1647」)の開発に成功しました。(図1参照)
T1647を用いた酵素の大量試作では、実験室スケール(5 L)の培養から実用スケール(60,000 L)の培養へ、約12,000倍のスケールアップを達成し、東レ独自開発のバイオマス分解酵素生産微生物による酵素量産化技術を確立しました。
今回の受賞は、上記の取り組み内容が評価されたものです。
東レのバイオマスを分解する酵素の製造技術は、遺伝子組換え技術を用いないため、遺伝子組換え微生物を用いる際に必要な封じ込め設備が不要で、バイオマスから単糖を製造する過程で使用する酵素の生産コスト削減が可能です。
また、東レは、コスト高の課題となる酵素を膜で回収・再利用することにより、酵素使用量を50%削減できる技術を確立しています。この酵素回収プロセスを単糖製造に組み込むことによって、コストの多くを占める酵素費を削減できることから、今後、単糖製造システムの普及とともにバイオマス分解酵素製造の拡大が期待されます。
さらに、本バイオマス分解酵素は、非遺伝子組換え技術を用いているため、食品加工、飼料用途への展開が期待され、すでに複数社と技術ライセンスやビジネス連携について協議を始めています。
東レは、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念のもと、非可食性バイオマスを原料としたバイオベースモノマー生産に向けた技術を創出し、社会の発展に貢献してまいります。
■受賞内容
受賞名 | 「第36回 独創性を拓く 先端技術大賞」 社会人部門 産経新聞社賞 |
受賞テーマ名 | 非可食性バイオマスからの糖製造向け新規酵素の技術開発 |
受賞者名 | 東レ(株)先端融合研究所 加川雄介、西山竜士、野口拓也、山田勝成 |
(図1)非可食バイオマスから化学品モノマーを製造するフローと酵素の関係図
2023年7月20日に開催された授賞式の様子
(左から 西山竜士、山田勝成、加川雄介、野口拓也)
(ご参考)「独創性を拓く 先端技術大賞」について
「先端技術学生論文表彰制度」は1986年に理工系学生の独創性と創造性をはぐくみ、研究への意欲を高めることを目的に創設されました。第16回より「科学技術創造立国」の実現には、産学官の連携や若手技術者の育成が不可欠との考えから、企業の若手研究者・技術者も表彰対象に加えて、名称も「独創性を拓く 先端技術大賞」と改められました。
<参考資料>
先端技術大賞受賞 内容紹介および受賞論文
https://www.sankei-award.jp/sentan/jusyou/2023年4月17日
非可食バイオマスを用いた糖製造技術の実証について
https://www.toray.co.jp/news/details/20230410162320.html 以 上