業界初 感光性ナノカーボン導電ペーストを開発
~マイクロLEDや半導体の微細実装・高生産性を実現~
2023.07.19
東レ株式会社
東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:大矢 光雄、以下「東レ」)は、電子部品、タッチセンサー等の配線材料として事業展開している感光性導電材料(RAYBRID
®1))に新たにナノカーボンを適用することで、微小な電子部品を既存技術対比30℃以上、半分以下の低温・低圧条件で高信頼に接合できる新規接合材料の開発に成功しました。(2025年初頃の量産目標)
一般的な接合材料であるハンダなどの合金材料は、バンプと呼ばれる接合部の微細化が困難であり、かつ実装時に高温・高圧が必要となるため高速実装に対応できないという課題がありました。特に次世代ディスプレイとして期待されるマイクロLEDディスプレイは、10~20μmの非常に微小なLEDチップを、大量かつ高速に実装する必要があり、大きな量産課題となっていました。
そこで東レは、長年培ってきた銀などの金属粒子を含む感光性導電ペーストの技術をベースに、独自のナノカーボン分散技術を融合させて、感光性カーボンペーストを開発しました。カーボンを使用することにより、より高い信頼性が得られ、幅広い用途において配線との接合に対応できるようになりました。
『開発した技術の詳細』
1.微細バンプ形成
今回開発した当社接合材料は、フォトリソプロセスによりφ5μmまで微細なバンプが形成できます(図1)。従来材料の限界であったφ30μmを大幅に更新し、マイクロLEDや半導体の微細実装を可能としました。
<図1> 新規接合材料による微細バンプ(φ5μm)
2.低温低圧接合による大面積一括実装
従来材料では180℃、10MPaが必要であったのに対し、東レ独自の有機設計により、110℃、5MPaと大幅な低温化・低圧化を達成しました。この技術により、マイクロLEDの一括実装を可能にし、生産性が大幅に向上します(図2)。
<図2> マイクロLED一括実装後の点灯基板と点灯LED
3.検査・リペア技術
実装後に不点灯が判明した電子部品についてはリペア処理が必要となりますが、従来技術では不点灯部位にバンプを再形成することができず、リペア対応も量産課題の一つとなっていました。本材料はバンプを別基板へレーザー転写が可能であることから、リペア箇所へのバンプ再形成を実現しました。
なお、大面積一括実装およびリペア技術につきましては、東レエンジニアリング株式会社と連携し、同社のもつ実装設備、レーザー転写設備により、既に検証しています。
東レは電子部品、ディスプレイ、タッチセンサー等に20年以上にわたり感光性導電材料を展開し、強固な量産供給体制を整えています。今回の新規接合材料により素材の幅を広げ、マイクロLEDや半導体等の新規分野に事業拡大を目指していきます。
東レは、コア技術である「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」、「ナノテクノロジー」を駆使し、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。
<用語説明・注釈>
1)RAYBRID
®金属などの導電性粒子、または、ガラス・セラミックスなどの絶縁性粒子を分散した感光性機能材料。
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