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―風車の状態監視データとAIの活用による故障予知技術―
2018年3月30日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
理事長 古川一夫
NEDOと東京大学、産業技術総合研究所は、風車の状態監視データとAIを活用した故障予知技術を開発しました。国内の風車は部品の故障や事故によるメンテナンスのための停止時間が長く、海外の風車と比較して運転時間が短くなっていましたが、この成果により、停止時間を大幅に短縮し、風力発電の設備利用率が21%から23%に向上できることを確認しました。
風力発電は、太陽光発電と並び大量導入が期待される再生可能エネルギーの一つです。しかし、海外と比較すると、複雑な地形、気象条件等により国内の風車の故障や事故による交換作業などのメンテナンスのための停止時間が長く、設備利用率は低い水準に留まっています。
これらの背景から、「スマートメンテナンス技術研究開発(分析)(リスク解析等)※1」においてNEDOと東京大学、産業技術総合研究所は、故障や事故によるメンテナンス等に伴う風車の停止時間を削減し、設備利用率※2を向上させることを目的として、風車に設置されているCMS(Condition Monitoring System)※3データなどとAIを活用した異常検知・故障予知技術を開発しました。今回の成果を活用することで、風車の停止時間を大幅に短縮し、風力発電の設備利用率が21%から23%に向上できることを確認しました。
設備利用率を向上させるために、異常の兆候検知と機器点検時間の短縮に取り組みました。
まず、風力発電の実機における軸受損傷進展実験を行い、ごく初期の損傷から故障に至るまでの振動の変化を確認したうえで、東京大学と産業技術総合研究所が所有するAIの技術を適用し、風車用CMSデータを分析する方法を検討しました。その結果、これまで困難とされてきた大型部品(主軸・増速機軸受)の異常兆候を検出可能な技術を開発し、さらに部品損傷進展モデルを活用した診断予測技術も開発することに成功しました。これらの技術を適用し、国内にある43基の風車で実証した結果、交換意思決定の1~3ヶ月前での異常兆候検知を実現し、約9割の異常検知率を達成しました。これにより、停止時間の大幅短縮による風力発電の設備利用率向上を実現できます。
図1 CMSデータによる故障検知
また、風車の運用実態を詳細に調査、分析を行い、これまで収集できなかった風車運用に関する情報の獲得を実現し、データを整理しました。これらをもとに、IT技術を活用したタブレット情報蓄積装置「SMS(Smart Maintenance System)プラットフォーム」を開発しました。このプラットフォームの仕組みを用いて現場作業を行った結果、メンテナンスの作業効率を向上させ、機器点検時間を最大40%短縮できることが確認できました。
図2 SMSプラットフォーム
本研究開発の成果を広く普及し、風力発電の設備利用率向上に繋げていくため、CMSデータ等について、各事業者が自社の秘匿情報を適切に保護した上で共通に利用できるデータベースの構築や、本研究開発の成果をまとめたe-ラーニング教材の発信等により、スマートメンテナンスの更なる普及を推進していきます。
NEDO 新エネルギー部 担当:小島、遠藤、田窪 TEL:044-520-5273
NEDO 広報部 担当:藤本、髙津佐、坂本 TEL:044-520-5151 E-mail:nedo_press@ml.nedo.go.jp
情報提供:JPubb