[2018 年 3 月 15 日]

新型小水力発電装置の開発
～少水量条件下での水力発電に挑む～

■鉄建建設株式会社（本社：東京都千代田区、社長：林 康雄）は、株式会社 NewAct（東京都豊島区）、あき電器株式会社（東京都調布市）、株式会社久力製作所（茨城県行方市）の技術協力を得て、新型タービンを用いた小水力発電装置の開発に成功しました。現在、茨城県石岡市の協力を得て、同市内の農業用水路にて試験運転中です。

■地域貢献型の製品開発

今回開発した小水力発電装置は、小さな農業用水路やトンネル湧水を排出する中央排水溝程度の水量でも発電できることを目的としています。これは、山間部や農村部でもこのような水流があれば電気を使用できるようになるためです。例えば、石岡市の試験ではイノシシによる田んぼへの鳥獣被害対策として、1 台の発電装置で侵入防止電気柵 2.2km を設置しています。その他、防災のための河川の水位計測データやリアルタイム動画を観測所に送信したり、山間部の雨量計測などを行う電力としたりすることが可能です。

■水力発電は一般的に、小型・大型の機種に関わらず、水深の浅い水路、流速の遅い水路、流量の少ない水路では発電が難しいとされてきました。実際、図-１に分類したように、従来型の水力発電機では、この厳しい条件下において発電できる機種はありませんでした。下記に各発電機で使用されるタービン（水車）と適合環境条件を示します。

図-1 一般的なタービンと新型タービンの適合環境

【ペルトンタービン】 水の速度を利用し発電する。お椀形の羽根に水を吹きあて、一般的には水平方向を軸に回転させる。落差が大きく、水量が少ない環境条件下で使用される。

【フランシスタービン】 水の圧力と速度を利用し発電する。ランナーと呼ばれる羽根車に水の力を作用させ発電する。広い範囲の落差で使用でき、日本の水力発電所の約７割がこのタイプ。

【カプランタービン】 水量を利用し発電する。フランシス水車を低落差に対応できる、羽根の角度を調整したタービンとも言える。

参考： 中部電力 HP「水車の種類」

■開発した小水力発電装置の枢要となる新型タービン

新型タービンの構造は、回転体の周囲に水流によって開いたり閉じたりする 16 枚の可動翼がついており、可動翼タービンと呼んでいます。可動翼は上流側で水圧を受けて開き、水のエネルギーを受けとめ、タービンの回転力に変換します。その後、下流側に回転した可動翼は、今度は水圧を利用して閉じ、（タービンを停止させる）逆向きのエネルギーを受け流します。

■新開発小水力発電機の特徴

①水深が 10cm 程度の浅い水流においても発電が可能。
②水量が 0.02 ㎥/s 程度以上あれば発電が可能。
③流速が 1.5m/s 程度以上あれば発電が可能。
④一つの水流に設置する場合は、流速が回復する間隔で、直列･並列の連続設置が可能。
⑤水が流れてくる方向が変化しても、可動翼により、すべての方向から流れてくる水のエネ ルギーをリアルタイムで効率よく受け止めることが可能。
⑥流速や流量が極端に少ない水路でも、小さな落差を利用して、集水加速導水路（写真-1 参照）を設置することで発電が可能。

■茨城県石岡市での試験運転の状況

写真-１ 試験運転中（遠景）
写真-２ 試験運転中（近景）

■発電性能試験の結果

室内試験にて 10rpm～60rpm の範囲内で発電性能の試験を実施 測定しました。測定結果は図-4 のとおり、タービンの回転速度 60rpm で 9.6W の発電性能でした。 石岡市の試験運転でも発電性能を測定し、集水加速導水路によ る流速 2.0m/s の条件下で、最速回転速度 60rpm・発電出力 9.6W であることを確認しています。

■特許出願中

■今後は一般公開後、実用販売化の可能性を検討しています。

図-４ 発電性能試験結果
図-2 タービン全体断面図
図-3 可動翼タービン概略図

このリリースの画像：
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